健康・福祉の情報発信「いきいき倶楽部」


1)投与ルート紹介

薬を体内に取り込むには、いくつかのルートがあります。

 ・口から服用(経口
 ・静脈や筋肉や皮膚に注射(静脈内投与・筋肉内投与・皮下投与
 ・脊髄の周りのスペースに注射(髄腔内投与
 ・舌の下に置く(舌下投与
 ・直腸や膣に挿入(経直腸投与・経膣投与
 ・眼に注ぐ(点眼
 ・鼻の中に噴霧して鼻粘膜を通して吸収する(経鼻
 ・口から肺に吸い込む(吸入
 ・局所的または全身的な効果を得るため皮膚に塗る(経皮投与
 ・貼り薬から皮膚を通じて体全体に運ぶ(経皮的吸収

各投与経路には、それぞれ固有の目的やメリット・デメリットがあります。

                   

2)経口ルート

経口は最も便利な上に、通常は最も安全で費用もかからないため、一番よく使われている投与法ですが、薬が消化管を通ることによる制約もあります。
経口投与された薬は、通常は口から胃を通過して、多くが小腸で吸収されます。そして、血流に乗ってその標的部位に運ばれる前に、腸壁と肝臓を通ります。多くの薬は腸壁と肝臓で化学的に変化するので(代謝)、血流に到達したときは量が少なくなっています。

経口投与では、消化管内の食べものや他の薬の存在によって、薬の吸収量や吸収速度が左右されることがあります。
そのため、空腹時に服用する薬、食後に服用する薬、特定の他の薬と併用してはいけない薬、経口投与できない薬などに分けられることになります。

経口薬の中には、消化管を刺激するものもあります。
たとえばアスピリンや非ステロイド性抗炎症薬の多くは、胃や小腸の内膜を傷つけることがあり、潰瘍を起こしたり、すでにある潰瘍を悪化させたりします。このほか、消化管で吸収されにくいものや不安定なもの、胃酸や胃の消化酵素で破壊される薬もあります。

経口ルートが使えない時、例えば口から何も食べられない時、薬を素早く投与しなければならない時、正確な用量あるいは非常に高用量で投与しなければならない時、消化管から吸収されにくい薬や吸収が不安定な薬を使うときなどは他の経路を使います。


3)注射ルート

注射による投与(非経口的投与)には、皮下、筋肉内、静脈内、髄腔内に注射する方法があります。
注射用製剤の製造や調剤のしかたによって、注射部位からの薬の吸収を数時間、数日、あるいはそれ以上長く持続させることもできます。
このような製剤は、吸収が速い製剤のように何度も投与する必要はありません。

       
              <薬を皮膚から体内へ送り込む方法>
     薬を皮膚から投与するには、針を使って注射する(①皮下注射、②筋肉注射、③静脈注射)、
     ④パッチ剤を貼る(経皮的吸収)、⑤体内に埋め込む(インプラント)といった方法があります。



皮下投与では、針を皮膚のすぐ下にある脂肪組織に挿入します。
注入した薬は毛細血管に入り血流に乗って運ばれるか、リンパ管を経て血流に達します。
インスリンのような大きな分子のタンパク質でできた薬は、組織から毛細血管への移動が遅いため、通常はリンパ管を経て血流に入ります。

タンパク質製剤の多くは内服すると消化管で消化されてしまうため、皮下から投与されます。
一部の薬(避妊に使われるプロゲスチン等)では、プラスチック製のカプセルを皮下に挿入する方法も用いられますが、この経路を使うことはまれです。

より大量の薬が必要なときには、皮下投与よりも筋肉内投与が適しています。
筋肉は皮膚と脂肪組織の下にあるため長い針を使い、上腕、太もも、あるいは尻の筋肉に注射します。
薬が血液中に吸収される速度は、筋肉への血液供給によってある程度決まり、血液供給が少ないと吸収に時間がかかります。

静脈内投与とは、針を直接静脈に挿入する方法です。
薬が入った溶液を1回の注射ですべて注入することもあれば、点滴などで持続的に注入することもあります。点滴の場合、溶液は折りたたみ式ビニール袋から重力、あるいは輸液ポンプによって細い柔軟なチューブを経て、通常は前腕の静脈に挿入したチューブ(カテーテル)へと送りこまれます。

静脈内投与は正確な用量を速く、手際よく全身に運ぶ最も良い方法です。
静脈内投与は、皮下注射や筋肉内注射では痛みや組織の損傷を起こしかねない、刺激性の薬にも使われます。

肥満の人では針やカテーテルを静脈内に挿入するのが難しくなるため、静脈内注射は皮下注射や筋肉内注射よりもやりにくいことがあります。
静脈内に投与した薬はただちに血流によって運ばれるので、他の経路で投与したときよりも早く効果が現れる傾向があります。

このため、医師は静脈内投与を受けた患者をよく観察して薬が効いているかどうか、あるいは薬が好ましくない副作用を起こしていないかどうかを調べます。
また、この経路で投与する薬の効果は、おおむね短時間持続型です。

                

髄腔内投与では、脊柱(せきちゅう)下部の2つの椎骨の間から針を刺して脊髄を囲む空間に挿入し、脊柱管薬を注入します。
注射部位を麻痺させるために、しばしば少量の局所麻酔薬をそこに用います。

この経路は、脳や脊髄とそれらを覆っている組織(髄膜)に急速な効果や局所効果を与える薬が必要なとき、たとえばこれらの部分の感染症を治療する場合にも使います。
この方法で麻酔薬を投与することもあります。


4)舌下ルート

2~3個の薬を舌の下に置く方法(舌下投与)で、薬は舌の下にある小血管から直接吸収されます。
舌下投与は、狭心症(心筋への血液供給が不足するために生じる胸痛の発作)の緩和に使用されるニトログリセリンにとりわけ適しています。
薬の吸収が速く、腸壁と肝臓を経由せずにすぐ血流に入るからです。
しかしながら、ほとんどの薬は不完全あるいは不安定な形で吸収されるため、この方法は使えないことが多いです。


  ⇒ 薬の投与法 2 へ


ページの最初へ戻る


 



Nanoテックス ホーム  >  「いきいき倶楽部」  >  健康情報コーナー  >  薬の投与法 ①

                                       >  薬の投与法 ②


Nanoテックスでは、健康や福祉に関する記事の執筆・監修を承っております。
ご依頼などございましたら、お問合せページよりお願いいたします。