1)貧血とは
◇ 貧血とは
貧血とは、血液中の赤血球や血色素であるヘモグロビンが正常よりも少なくなってしまった状態をいいます。
赤血球に含まれるヘモグロビンは、酸素を全身に運ぶ重要な役割を担っています。
そのため、貧血になると酸素を運搬できなくなり、体が酸欠状態になってしまいます。
◇ 成人の赤血球とヘモグロビンの基準値
赤血球 (RBC) |
男性 | 410 ~ 530 万/mm3(μL) |
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女性 | 380 ~ 480 万/mm3(μL) | |
ヘモグロビン (Hb) |
男性 | 14 ~ 18 g/dl |
女性 | 12 ~ 16 g/dl |
2)貧血の種類と症状
◇ 貧血の種類
鉄欠乏性貧血 | ヘモグロビンの材料となる鉄が不足することによって、必要な量のヘモグロビンが作られなくなる貧血。 ▼ 特徴的な症状 ・口内の粘膜や眼瞼結膜(下まぶたの裏の部分)が白っぽい ・爪がスプーンのように反り返ったり、もろくなる |
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再生不良性貧血 | 血液をつくる骨髄の働きが低下して、赤血球などすべての血球が作られなくなる貧血で、特定疾患(難病)に指定されている病気です。 ▼ 特徴的な症状 ・出血しやすい (皮膚や歯茎からの出血、あざができやすい、出血が止まりにくいなど) ・尿や便に血が混じる ・悪化した時、発熱や喉の痛みなど風邪に似た症状がでることがある (発熱時は骨髄移植や輸血などが必要な場合もある) |
巨赤芽球性貧血 (悪性貧血) |
赤血球が作られるときに必要なビタミンB12または葉酸が不足することによって、赤血球に異常をきたす貧血。 ▼ 特徴的な症状 ・手足の痺れなどの知覚障害、歩行障害 ・意識が混濁するなどの神経の症状 ・味覚の低下や食欲がなくなるといった消化器系の症状 ・年齢に不相応な白髪がみられる ・舌の荒れ |
溶血性貧血 | 赤血球の破壊によって起こる貧血。 ▼ 特徴的な症状 ・皮膚や白目が黄色くなる黄疸 ・尿の色が濃くなったり、赤っぽくなる |
二次性貧血 (続発性貧血) |
骨髄や赤血球の異常ではなく、他の病気が原因となって起こる貧血。 ▼ 特徴的な症状 腎臓病、妊娠、結核などの慢性感染症、慢性炎症疾患、膠原病、内分泌疾患、悪性腫瘍、肝臓病や脾臓の病気、リウマチ性の病気など |
◇ すべての貧血に共通する症状
□ めまい・立ちくらみ □ 動悸・息切れ □ 疲れやすい |
□ 顔色が悪い □ 耳鳴り |
□ 食欲がない □ 冷感・寒気 |
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3)最も多い鉄欠乏性貧血について
◇ 原因
■ 偏った食事や過度なダイエットによる鉄分の不足
■ 妊娠中や授乳中、胎児や母乳に鉄分をとられる
■ 胃の切除や胃酸の分泌が低下することによる鉄の吸収低下
■ 月経過多、潰瘍、痔など失血による鉄の排泄増加 など
◇ 治療
鉄分を確保できる食事療法が大切です。必要な場合は、鉄剤の内服や注射が行われます。
◆ 食事療法
1.食事から鉄分をしっかり摂りましょう
推奨される1日の鉄の摂取量 | ||
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成人男性 | 7.5 mg/日 | |
成人女性 | 月経あり | 11 mg/日 |
月経なし | 6.5 mg/日 |
※1日約1mgの鉄が損失しています。
女性は月経により、さらに1日当たり、約0.5mgの鉄が失われます。
食品に含まれる鉄には、「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」があります。
「ヘム鉄」は溶けやすく、体内に吸収されやすいため、効率的に鉄がとれます。
ヘム鉄は牛肉、豚肉、鶏肉、魚類に多く含まれます。
「非ヘム鉄」の多い食品も、鉄分の吸収を高める食品と一緒に摂ることで効率よく鉄を摂ることができます。
色々な食品からバランスよく鉄分をとりましょう。
2.たんぱく質をとりましょう
たんぱく質は、ヘモグロビンの材料となる栄養素です。
肉、卵、魚、大豆製品、乳製品といろいろな種類のたんぱく質を食べましょう。
魚や肉のたんぱく質は、「非ヘム鉄」を消化管内で溶けやすくして、体内に吸収しやすくする効果が期待できます。
3.ビタミンCをとりましょう
ビタミンCにも「非ヘム鉄」を吸収しやすい形に変える働きがあります。
「非ヘム鉄」を多く含む食材とブロッコリーや小松菜など、ビタミンCを含む食材を一緒に調理したり、食後に果物をとることで、鉄の吸収率を上げることができます。
4.いろいろな食品をバランス良くとりましょう
ビタミンB2、B6、葉酸、銅なども造血や鉄の吸収に欠かせない栄養素です。
これらを3食きちんと食べることが大切です。
5.調理方法や食べ方を工夫しましょう
鉄なべ、鉄のフライパンなど鉄製の調理器具を使うと、鉄が微量に溶けて鉄分補給につながります。
また、胃液の分泌が高まると鉄が吸収されやすくなります。
酸っぱい物、辛い物、ハーブ類を食べたり、よく噛んで食べたりすることで胃酸の分泌を促し、吸収率を高めることが期待できます。
貧血の症状が続く場合や心配なことがあれば、病院を受診して、医師に相談することをお勧めします。初めて受診する場合には、内科を受診するか、女性は婦人科の医師に相談してみてもよいでしょう。必要な場合は、その専門医を紹介されます。
「いつものこと」と放置せず、不安なことは早めに医師に相談しましょう。
厚生労働省 e-ヘルスネット 「貧血の予防には、まずは普段の食生活を見直そう」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-008.html