1)介護サービス情報の公表制度とは ![]() 介護保険制度では、利用者は自ら主体的に事業者を選択・決定し、契約をしてから様々な サービスを利用します。 そのような中、利用者が事業者と契約をするためには、『選択できるだけのサービスの供給 量』と『選択の判断に資する必要かつ十分な情報』の2つが必要と言われています。 『サービスの供給量』については、介護保険サービス事業者がおおむね順調に増加してい る一方、『情報の提供』については、選択に資する情報提供の環境が十分には整っていま せんでした。 要介護高齢者自らが情報収集することは難しく、行政から基本的な情報は出されていても 事業者を選択するための情報ではないことや、ホームページや広告など事業者側からの 情報しかなく、利用者の立場から見ると、例えば自分の近所にある事業者の比較検討が しにくかったのです。 そこで、事業者の情報提供の仕組みを整備して、利用者がより適切に事業者を選択できる よう支援するために『介護サービス情報の公表制度』が創設されました。 『介護サービス情報の公表制度』は、公表された情報によって事業者を評価したり、格付け したりするものではありません。 あくまでも、事業者のサービス提供に関する取り組みの“客観的な情報”を出してもらうこと が目的です。 誰かが“よい・悪い”を判断した内容を見せるのではなく、あくまでも客観的な事実確認だけ を公表する、これがこの制度の重要なポイントです。 すべての項目を公平に公表することで、それぞれのサービスや事業者間で比較・検討が可 能になり、利用者が自分の優先順位の高い、ニーズに応じた事業者を選択できる仕組みに なっています。 介護保険が契約制度である以上、利用者の側にも「自分自身が選ぶ」という“評価”をする ことが必要です。 介護サービス情報の公表制度は、介護保険法の中で『都道府県の仕事』と位置付けられて いますが、都道府県が指定する団体に事務の一部を行わせることができるとされています。 法令では全国共通の制度となっているため基本的な仕組みは共通ですが、細かい運用面 は都道府県によって異なる部分もありますので、詳細はお住まいの各都道府県にご確認く ださい。 ![]() 2)情報公開のしくみ ![]() 介護サービス事業者には『介護サービス情報の報告義務』が課せられており、自分の事業 所のサービス提供の取り組み方について知らせる必要があります。 都道府県は事業者から報告を受けた内容について、それが事実かどうかの調査を行い、 その結果を公表します。 対象となるのは1年間の介護報酬額が100万円を超える事業者で、100万円以下の事業者 は公表制度の対象になりません。 また、新規に指定を受けた事業者は『基本情報』と『調査情報』のうち、基本情報の提出義 務があります。 基本情報は大きく五つに分けられ、一方調査員が訪問調査をする調査情報は、大中小に 項目が分類されています。 さらに、小項目では『確認事項』と『確認のための材料』が明記されています。 |
基本情報 | 運営法人の概要 | 法人等の種類/法人名/所在地/代表者名/設立年月日/ホームページの有無/他に提供している介護サービス など |
事業所の概要 | 事業所名/所在地/管理者名/事業所指定日/交通手段 など | |
従業者に関する事項 | 職種別の従業者数/勤務形態/労働時間/従業者一人当たりの利用者数 など | |
サービスの内容 | 運営方針/特別な医療処置等を必要とする利用者の受け入れ状況/サービス提供実績/苦情対応窓口/損害賠償/特色 など | |
利用料等 | 介護給付以外のサービスに要する費用/キャンセル料の徴収状況 など | |
調査情報 | 大項目 | 大項目は、公表情報の“利用者の視点に立って”分類した「Ⅰ介護サービスの内容に関する事項」と「Ⅱ介護サービスを提供する事業所又は施設の運営状況に関する事項」の2つの項目で構成されています。 |
中項目 | 中項目は、大項目の分類に応じて、“介護保険の基本理念”などが、具体的なサービス提供の中で実現されているかを確認するものです 。具体的には、「大項目Ⅰ」に対して「介護サービスの提供開始時における利用者等に対する説明及び契約等に当たり、利用者の権利擁護等のために講じている措置」「利用者本位の介護サービスの質の確保のために講じている措置」など5項目、「大項目Ⅱ」に対して「適切な事業運営の確保のために講じている措置」「情報の管理、個人情報保護等のために講じている措置」など5項目が設定されています。 | |
小項目 | 小項目は、中項目の分類に応じて、各サービスの特性を踏まえ、具体的な取り組み状況を確認するための項目です。 具体的には、「利用者等に関する情報の把握及び課題の分析の実施の状況」「認知症の利用者に対する介護サービスの質の確保のための取組の状況」「在宅におけるターミナルケアの質の確保のための取組の状況」「介護支援専門員等との連携の状況」「事業者における役割分担等の明確化のための取組の状況」「安全管理及び衛生管理のための取組の状況」「介護サービスの提供のためのマニュアル等の活用及び見直しの実施の状況」など、計33項目が設定されています。 |
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確認事項 | 上記の小項目それぞれに設定されているもので、調査員が事業所の取り組み状況について、具体的な事実を確認する事項です。 これは言い換えれば“利用者が選択する際に確認する”事項であるともいえます。 |
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確認のための材料 | 事業所が公表しようとする情報に関して、調査員が事実確認を行う根拠資料となるものです。 基本的にこの材料は事業所側が自ら提示する必要があります。 |
これらの報告や調査の公表に従えない場合は、都道府県知事による是正命令、指定取り 消し等が行われることがあります。 また、事業者が虚偽の報告をした、調査を妨害したという場合も同様です。 公表のための調査は、1年に1回、毎年定期的に受けることが法令で定められています。 3)公開情報をどう知るか ![]() 調査された情報は、原則としてインターネットのホームページで公表します。 サービスの公表システムは全国共通でつくられており、インターネットの画面は各県とも共 通です。 全国介護サービス情報公表サイト一覧 このページからはすべての都道府県のトップページにリンクが張られているので、他県の 情報もすぐに検索できます。 サービス公表のメリットとして、これからサービスを選ぶ利用者やそのご家族にとっては様 々な事業者の比較検討ができる便利さがあります。 今までケアマネジャーや役所に任せていたものを、事業者がどういう取り組みをしているの かなど自ら確認し、自ら選択する際の有力なデータを得ることができます。 また、すでに利用しているサービス内容と公表情報で得られた他のサービスとの比較がで き、次回の選択につなげていくことができます。 そのことで、自分で選び、評価をして自己決定をするという“利用者の判断力を育成していく 効果”もあります。 遠方に住むご家族の方でも自由に閲覧することができ、どこからでもどこの地域の情報で も確認できることは、インターネットを使った公表制度の大きな利点の一つです。 ![]() 福祉情報トップへ戻る |